蘭嶼は台湾とフィリピンの間にあるルソン島の海嶺上にある海底噴火でできた火山島です。地層は角閃石を含む安山岩質溶岩と玄武岩質の集塊岩が主です。島の主な岩体は中新世初期に火山活動によってできたもので、主に安山岩と安山岩質集塊岩でできています。母岩の地質は固いため、島内の山は高く切り立っており、山岳・台地も広がっています。海抜400メートルを超える丘は10座、500メートル以上は2座あり、主峰の紅頭山は海抜548メートルに達します。蘭嶼の海岸ではサンゴが多く見られ、裾礁が形成されています。東岸と北岸の隆起したサンゴ礁は幅が非常に広く、海岸の岩石は海水によって激しく侵食され、絶壁や海食洞といった特殊な景観を形成しています。
蘭嶼は高温多湿な熱帯性気候に属しており、気候形態の特徴は驟雨と強風です。生物は環境資源を効率よく利用しており、多種多様な動植物が生息しています。生息が確認されているのは哺乳類6種、鳥類101種(留鳥24種、渡り鳥77種)、爬虫類15種、両生類3種、昆虫約400種です。希少種や固有種も非常に多く、哺乳類の固有種は2種、鳥類では希少種が3種います。珍しいものには、リュウキュウコノハズクやズアカアオバト、サンコウチョウがいます。また、オジロビタキやギンムクドリ、クロツグミも希少種です。
このほか、両生爬虫類には固有種が2種います。チョウ類では、代表的なものはコウトウキシタアゲハ、ナミエシロチョウ、黒脈白斑蝶(Danaus melanippus edmondii)、コウトウシロシタセセリなどです。その中で、コウトウキシタアゲハはエサとしているウマノスズクサが生薬として薬草業者に乱獲されたことと、チョウそのものが人類に過度に捕獲されたため、現在では台湾に生息する希少なチョウ4種のうちの1種となっています。区域内に分布するチョウは多くが台湾本島の種類と同様であり、一部は琉球系のものと似ています。また、9種はフィリピン系のチョウ類です。このため、この区域は台湾本島と近隣地域の昆虫生理学を研究するのに理想的な場所だと言えます。
蘭嶼の海域は黒潮が北へ流れる通り道にあります。潮下帯は水質が透き通り汚染もなく、美しい広大なサンゴ礁を擁しており、豊富な海洋生物資源と海底景観資源が育まれています。サンゴ礁の魚類は405種類に及び、そのほか多くの無脊椎動物も生息しています。
タオ族
先住民のヤミ(タオ)族は台東外海の蘭嶼島に暮らしています。ヤミ族の人々は「タオ」と自称しています。これはタオ語で「人」を意味しています。
一 トビウオ文化
毎年3月、黒潮に乗ってトビウオが蘭嶼の海域にやって来ます。ヤミ族の人々はトビウオを誘い込むための祭りを開き、その後からトビウオの漁獲を開始します。漁獲は魚の群れをおびき寄せるため、夜間にのみ、たいまつの灯りを使って行われます。4月になると昼に小さな船で大魚を釣りに行くことが許可されます。夜間は漁をしません。5~7月は日中のトビウオ漁が解禁され、この数カ月間は最も繁忙な季節となります。トビウオ以外の魚の捕獲は認められません。9月が過ぎ、旧暦9月15日の中秋節の後にはトビウオの食用が禁止され、食べきれなかったトビウオはすべて破棄されます。
二 穴居地下屋
蘭嶼は熱帯海洋性気候に属し、年間平均気温は26度となっています。冬に比較的冷え込みが感じられる以外は、灼熱の天気が続きます。さらに、台風の通り道に位置する島には防壁となる高い山が無い(最高峰はわずか548メートル)ため、ヤミ族の祖先は「穴居地下屋」と呼ばれる半地下式の壁の低い木造建築を発明しました。これにより台風シーズンでも心配することなく生活できるようになりました。また、真夏の暑さをしのぐために考えられた欄干式のテラスは夏に絶好の休憩場所になっています。
三 チヌリクラン
ヤミ(タオ)族のカヌーに似た木造漁船「チヌリクラン」には祖先の知恵が詰まっています。毎年トビウオ祭りの後、造船の作業が開始されます。船主たちは適当な木材を伐採するために山に行き、大まかな処理をしてから作業場まで運び、そこでさらに加工をします。
四 芸術の才能
船に施された繊細な彫刻と図柄は、ヤミ(タオ)族の芸術的才能を示しています。メノウ柄、銀のかぶと柄、波模様などはすべてヤミ(タオ)族の生活の一部を表現しています。人形の図柄は家族の英雄を表しており、各一族の紋章でもあります。最も重要な模様は歯車状の目の模様です。これは船の目を表しており、船を大航海時の災いから守るという厄除けの意味があります。造船技術のほか、紡織、陶芸、金銀器製作などでもヤミ族の芸術性が見て取れます。
五 社会組織
ヤミ(タオ)族の社会組織は氏族階級のようなものではなく、漁業団組織です。社会的権威は長老制度に基づきます。社会活動は主に父系の長老制度と漁業団組織によって管理されます。漁業団組織は、血縁のある家族とは別に、男性が漁をする際に形成するもう一つの組織です。チームで漁獲をする期間はメンバーが仕事を分担し、食べ物を分け合います。島の各村落の自主性は非常に強く、完全なる集落団体を形成しています。
六 民族衣装
男性は袖なし、襟なしの短いベストにふんどしを合わせます。女性は手織りのストールをスカートと組み合わせています。手織りの衣服はすべて白が基調となっており、色彩には黒と青が交互に使われています。