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大屯山火山群は七星山、大屯山、竹子山、コウ嘴山、面天山、向天山、大尖後山、紗帽山などを含む20余りの火山によって形成され、その多くは安山岩からできています。噴火の歴史は280万年前にさかのぼり、無数の地殻変動や噴火を繰り返し、風雨にさらされ今日の姿が出来上がりました。噴火の休止後も、活動期に形成された成層火山や楯状火山、火口、噴気孔、火口湖、堰止湖、断層、滝が残り、地下の熱水や二酸化硫黄が断層や亀裂を経て地表に噴出し形成した温泉や噴気孔など、後火山作用の特殊な地質景観も含め、これらすべてには大屯山火山群が内包する生命力が見て取れます。
大屯山火山群は地形が険しく人間活動も活発なことから、大型哺乳類が生きていくには適しませんが、林相が複雑なため中・小型の野生動物がたくさん生息しており、自然保護区にはタイワンザル、タイワンイノシシ、ハクビシン、トゲネズミなどの哺乳類が多く見られます。鳥類も豊富で123種が生息し、分布を見ると森林にコジュケイ、メジロ、ズアカチメドリなど、草原や茂みにアジアマミハウチワドリ、ダルマエナガ、水辺にルリチョウ、コサギなどが見られます。
このほかにもタイワンゴシキドリやヤマムスメなど、野鳥も見られます。なかでもヤマムスメは長尾山娘とも呼ばれ、色鮮やかな羽根が美しい台湾固有種です。
毎年5月から8月はチョウ類の季節で、鮮やかなチョウがひらひら舞う姿を至るところで見ることができます。特に、気流に乗り大群で飛来する大屯山のアサギマダラは、しなやかで美しい特有の生態景観を形作っています。また特殊なものとしては、見た目が美しく台湾固有種のタイワンジャコウアゲハが挙げられます。
夏が到来すると、山林ではセミの声が高らかに奏でられ、タイワンヒグラシ、ソウザンヒグラシ、クサゼミ、ニイニイゼミなどの鳴き声がひっきりなしに聞こえてきます。爬虫類は53種が生息し、そのうち個体数が最も多いのはアカマダラヘビとカサントウで、毒蛇で最も多く見られるのはタイワンハブとコブラです。両生類はタイワントビアオガエル、ラトウチガエル、ヒメアマガエルなど23種が生息していますが、そのうちヌマガエル、タイワントビアオガエル、タイワンヒキガエルが最も広く分布しており個体数も最多です。
大屯山火山群は亜熱帯に位置しますが、以下の2つの原因によって、同緯度の他地域とは違った植物分布を示しています。まず後火山作用の影響で土壌が高温、カルシウム不足で酸性度も強いため、地熱地帯特有の植物と水生植物が生育しています。そして冬期に強まる北東からの季節風の影響を直接受け、平地と比べて高湿多雨、低温であることから植生の「逆転現象」が見られ、亜熱帯多雨林と暖温帯常緑広葉樹林、尾根筋の短草草原といった異なる植物群落が同居するだけでなく、台湾中部の海抜2000メートル地点に生育する一部の植物をこの地域でも見つけることができるのです。
温泉と噴気孔のある一帯は高温で、二酸化硫黄がたまっているため一般の植物は生育が難しく、地衣類やコケ類、藻類などしか見られません。地熱地帯で多く見られるのはコケ類、セン類、硫黄芝、シネコキスチスです。シネコキスチスは地球上で最古の光合成生物である藍藻の一種です。水生植物は主に火口や沼地に分布し、カンガレイやオオハリイ、クログワイ、イグサが最も多く見られます。タイワンミズニラは台湾固有種で、夢幻湖に生育しています。
草原地帯の景観をなす主な植生は、ヤダケとススキです。ヤダケは地下に茎をびっしり這わせるため、ほかの植物はなかなか根付くことができません。より良い遺伝子に進化し環境変化に適応するため、園内のヤダケは1999年、大量に開花した後すべて枯死し、新しい苗と入れ替わりました。ここのススキは「白背芒」と呼ばれ、火山の熱やガスで覆われた斜面に生育するため他地域のススキより背が低く、赤い花をつけます。9月から10月にかけて見られるススキの鮮やかな赤い花はこの地域特有の景観となっています。
広葉樹林の大部分は標高500メートルから900メートルに分布し、タブノキやオオバタブなどのクスノキ科が主流ですが、台湾の中標高地域に生育するタイワンリンドウやタイワンアセビ、ヤマグルマなども見ることができます。草本植物と木々の間を渡り歩けるつる植物がバランスよく生育し植生の垂直分布を構成しているこの地域は、鳥類や昆虫、哺乳類、両生類などに巣作りやエサ探し、生存活動に最適の環境を提供しています。
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