阿里山森林鉄道は、森林開発のために敷設された産業鉄道です。海抜100メートル以下の地点から海抜2000メートル以上まで駆け上り、森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。森林鉄道の開通は林業を発展させただけでなく、沿線の都市構造をも変えました。特色のある景観が多く生まれ、現在ではその中の10カ所以上が政府指定の文化景観や文化財、歴史的建築物に登録されています。
文化遺産登録基準の各項目に合致したこれらの普遍的価値に加え、阿里山のヒノキ霧林は世界でも貴重な森林資源です。阿里山森林鉄道の範囲内には、貴重な自然保護区のほかに、亜熱帯広葉樹林、暖温帯広葉樹林、中温帯針広混交林(ヒノキ林)なども連なっており、非常に特殊で多元的な生態環境を有しています。普遍的価値と登録基準を満たした数々の項目を総合して考えると、阿里山森林鉄道は複合遺産に合致する文化資産だと言えます。
基準第1項:阿里山森林鉄道は森林開発のために敷設された産業鉄道であることから、森林鉄道の定義に当てはまります。また、海抜100メートル以下の地点から海抜2000メートル以上まで駆け上ることから、登山鉄道にも当てはまります。さらに、海抜2200メートルの沼平駅から2451メートルの祝山駅までは高山に線路が敷設されており、その名の通りの高山鉄道です。阿里山森林鉄道は森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。登山鉄道の特殊な工法が多く採用され、山林と平地をつなぐ林業鉄道のモデルとなっており、世界に2つとない存在だと言えます。
基準第2項:阿里山森林鉄道は、木材を都市の景色とする嘉義県・市の基礎を築きました。同時に、森林鉄道の開発によって北門駅周辺の集落や奮起湖、沼平など林業に携わる地域を活気づけました。それは、現在の都市構造にも引き継がれています。
基準第3項:阿里山森林鉄道は軌間762ミリの狭軌を採用しています。軌間1000ミリ以下のラック式以外の鉄道の中では、阿里山森林鉄道は非常に優れた活躍をしています。例えば、世界遺産に登録されているインドのダージリン・ヒマラヤ鉄道は海抜落差2144メートルと阿里山鉄道に及びません。以前、阿里山鉄道は嘉義から海抜2568メートルの塔塔加東埔まで続いており、その海抜落差は2538メートル以上ありました。阿里山鉄道の2421メートルという海抜落差は狭軌鉄道として世界一となっており、特殊性と重要性が見て取れます。
基準第4項:阿里山森林鉄道では、登山鉄道の特殊な工法が使われています。非常に複雑なループ線や大規模なスイッチバック、Uターンなどが代表的なものです。また、世界中で多く保存されるシェイ式蒸気機関車も有しており、林業鉄道の過去の発展の重要な道のりを示しています。
基準第5項:阿里山森林鉄道の存在は、人類が森林資源を利用してきた歴史を示しています。そして今日までにおける観光鉄道への転換と周辺集落による支援は、森林保護と教育的意味を伝える最適な教材になっています。
基準第10項:ヒノキ霧林は世界でも珍しい森林資源です。阿里山鉄道の範囲内には貴重な自然保護区があるほか、亜熱帯広葉樹林や暖温帯広葉樹林、中温帯針広混交林(ヒノキ林)の生態区域が連なり、非常に特殊で多元的な生態環境となっています。