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阿里山森林鉄道

國家:,Nation:,国家: 台湾
所在地:,City:,郡部: 嘉義市、嘉義県と南投県
方位:,GPS:,位置: N23.2830~23.33
E120.2530~120.49
入選時間:,Selected:,選択した時間: 2003
特殊價值:,Special:,特殊な値:
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方位:北緯23.2830度から23.33度、東経120.2530度から120.49度に位置しています。

対象地域:阿里山森林鉄道は嘉義市、嘉義県、南投県にまたがっており、全長は71.34キロメートルです。鉄道は北門、竹崎、木履寮、樟腦寮、独立山、梨園寮、交力坪、水社寮、奮起湖、多林、十字路、屏遮那、二万平、神木、沼平などの駅を通過します。阿里山森林鉄道の主な範囲は玉山支脈に属する阿里山山脈に位置し、核心地域には鉄道周辺の重要な集落や自然生態環境も含まれます。総面積は3万2900ヘクタールに及びます。

 

阿里山の地質環境

 

阿里山は阿里山山脈の主脈に位置しており、東側は玉山山脈に、北側は雪山山脈に隣接しています。海抜は2216メートルです。玉山山脈は始新世の層に、雪山山脈は始新世から漸新世の層に、阿里山山脈は中新世後期の層に属しており、阿里山山脈は3つの中で地質時代が最も若い山脈です。阿里山地域の地層は南港砂岩層で、中新世の後期、約1000万年前に作られました。主に砂岩とわずかな砂岩頁岩互層で構成されています。一方の阿里山山脈は南港層の厚い砂岩層によって成り立っています。阿里山山脈には南北に走る断層と東西に走る断層の両方があるため、険しい崖や滝が生まれました。阿里山山脈最高峰の大塔山は傾斜が急で険しい上、断層の崖は草木も生えておらず、雄大で美しい風景を擁しています。

 

阿里山の生態環境

 

阿里山地域は森林資源が豊富なため、野生動物にとって絶好の生息地となっています。ただ、海抜の高さが中程度の地域では長年にわたって人類による開発が進められたため、自然環境は大きな影響を受け、野生動物はより海抜の高い地域に移動しました。調査によると、阿里山に生息する動物は、哺乳類19種(タイワンザルとキョンは保護動物に指定)、鳥類75種(カザノワシ、クマタカ、サンケイ、ミカドキジ、モリフクロウ、ウオミミズクの6種は絶滅危惧種)、両生類8種(ムクカジカガエルは希少保護動物)、チョウ194種(台湾に生息するチョウの半数以上を占める)、魚類6種、甲殻類2種です。中でも、クサリヘビ科の阿里山亀殻花(Ovophis monticola makazayazaya)やアリサンヒタキ、拉氏明渓蟹(Candidiopotamon rathbunae)、アリサンサンショウウオ、ミミジロチメドリ、タイワンツキノワグマはいずれも台湾固有種です。

 

植物に関しては、毎年3月中旬から4月中旬まで、阿里山フラワーフェスティバルが行われます。花の季節は桜で幕を開け、ヒカンザクラやチシマザクラ、ソメイヨシノ、オオシマザクラ、ヤエザクラなどが次々に開花します。4月から5月には、タイリントキソウやニイタカシャクナゲ、ジギタリス、ヒメヒオウギズイセン、シナフジなどが見られます。阿里山鉄道眠月線の5号トンネルから10号トンネルの間にある岩壁には「タイリントキソウ自然保護区」もあります。タイリントキソウはプレイオネ属の多年草で、中国語名の「台湾一葉蘭」は、花の下に葉が一枚しかつかないことに由来しています。台湾固有種で非常に珍しい植物です。

 

阿里山の人文環境

 

阿里山のツォウ族は現在、嘉義県阿里山郷に主に分布しており、8つの村落があります。村落のうち、來吉と里佳、楽野は特富野社に、新美、茶山、山美は達邦社に属しています。ツォウ族は伝統的に農業と狩猟で生計を立てており、獲物の皮を衣服とするのがツォウ族の特色です。婚姻であれ祭祀であれ、すべて家族制度にのっとって厳密に行われます。大塔山をツォウ族の聖なる山とし、祖先の魂が眠る場所だとしてあがめています。そのため、ツォウ族は阿里山を伝統的な狩猟の場とする一方、祖先の魂を冒涜(ぼうとく)しないよう、大塔山には決して近づきません。

 

阿里山森林鉄道沿線の林相景観

 

阿里山鉄道は海抜の落差が急で、沿線の林相は変化に富んでいます。平地から海抜800メートルの独立山一帯は熱帯林となっており、ガジュマルやリュウガン、ソウシジュ、竹が主に生息しています。独立山から海抜1800メートルの屏遮那までのあたりは暖帯林で、クスノキやシリブカガシ、タブノキ、スギなどが見られます。屏遮那から海抜3000メートルまでは温帯林で、主に生息しているのはベニヒ、ヒノキ、タイワンスギ、タイワンツガ、タカネゴヨウなどです。

 

開発の手が入っていなかった17世紀以前は、ツォウ族が阿里山山麓の一帯に住んでいました。人口は少なく、彼らは狩猟によって暮らしていました。明・清代になり、漢族の移民と阿里山地域に住む先住民との間における接触は頻繁になったものの、当時行われていた交流は台湾原住民との物品の交換・売買に限られていました。20世紀に日本が台湾を植民地とした後、「農業は台湾、工業は日本」とする政策が打ち出され、1次産業の農林業は台湾総督府によって積極的に発展が進められました。阿里山については森林資源の現地調査が行われた後、台湾総督府への報告を経て、阿里山に存在する「無尽蔵」の森林資源の開発を行うことが決定されました。日本統治時代、阿里山と八仙山、太平山は台湾三大営林場とされ、阿里山営林場はその中で最初に開発が始められました。1895(明治28)年から日本政府は計画的な林業開発を進めました。1896年(明治29)年には阿里山で手つかずのヒノキの森が発見され、一連の山林調査が進められました。

 

阿里山森林鉄道はまさに、日本人が阿里山の「無尽蔵」の森林資源を開発するために敷設した産業鉄道です。海抜100メートル以下の地点から海抜2000メートル以上まで駆け上り、森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。1906年に建設工事が始められ、1912年に嘉義から二万平までの区間が正式に開通しました。1914年には路線は阿里山の沼平にまで延伸し、同時に伐木作業が本格的に開始されました。1945年に台湾光復(日本統治時代の終結)を迎えるまで約30年にわたって続いた伐木によって、阿里山の原始のヒノキ林はほぼ消失しました。阿里山森林鉄道は19世紀の産業鉄道技術の結晶であり、100年以上に及ぶ山林の変遷の証人でもあります。日本統治時代、阿里山の森林資源の採取のために建設されたこの鉄道は、現在では観光用の鉄道に変わりました。鉄道は主に一本の本線(阿里山線)と数本の支線から成っており、本線は嘉義駅から終点の阿里山駅までつながり、阿里山駅は支線の祝山線と眠月線(塔山線)の起点にもなっています。「祝山線」は日の出を拝むために建設された観光鉄道で、日の出の時間に合わせて毎日発車時間が調整されています。「眠月線」は、木材の運搬用に使われていた主要路線の一つで、現在は自然災害による損壊のため封鎖されています。阿里山の林業は嘉義市の繁栄をも支えました。製材工場や林材の卸売業、小売業、加工工場から、作業員のための宿舎、商店、飲食店、学校などまでが設置され、嘉義市中心部の発展を後押ししました。それによって嘉義市は当時の台湾四大都市の一つに成長し、「木材の都」とも称されました。

阿里山森林鉄道は、森林開発のために敷設された産業鉄道です。海抜100メートル以下の地点から海抜2000メートル以上まで駆け上り、森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。森林鉄道の開通は林業を発展させただけでなく、沿線の都市構造をも変えました。特色のある景観が多く生まれ、現在ではその中の10カ所以上が政府指定の文化景観や文化財、歴史的建築物に登録されています。

 

文化遺産登録基準の各項目に合致したこれらの普遍的価値に加え、阿里山のヒノキ霧林は世界でも貴重な森林資源です。阿里山森林鉄道の範囲内には、貴重な自然保護区のほかに、亜熱帯広葉樹林、暖温帯広葉樹林、中温帯針広混交林(ヒノキ林)なども連なっており、非常に特殊で多元的な生態環境を有しています。普遍的価値と登録基準を満たした数々の項目を総合して考えると、阿里山森林鉄道は複合遺産に合致する文化資産だと言えます。

 

基準第1項:阿里山森林鉄道は森林開発のために敷設された産業鉄道であることから、森林鉄道の定義に当てはまります。また、海抜100メートル以下の地点から海抜2000メートル以上まで駆け上ることから、登山鉄道にも当てはまります。さらに、海抜2200メートルの沼平駅から2451メートルの祝山駅までは高山に線路が敷設されており、その名の通りの高山鉄道です。阿里山森林鉄道は森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。登山鉄道の特殊な工法が多く採用され、山林と平地をつなぐ林業鉄道のモデルとなっており、世界に2つとない存在だと言えます。

 

基準第2項:阿里山森林鉄道は、木材を都市の景色とする嘉義県・市の基礎を築きました。同時に、森林鉄道の開発によって北門駅周辺の集落や奮起湖、沼平など林業に携わる地域を活気づけました。それは、現在の都市構造にも引き継がれています。

 

基準第3項:阿里山森林鉄道は軌間762ミリの狭軌を採用しています。軌間1000ミリ以下のラック式以外の鉄道の中では、阿里山森林鉄道は非常に優れた活躍をしています。例えば、世界遺産に登録されているインドのダージリン・ヒマラヤ鉄道は海抜落差2144メートルと阿里山鉄道に及びません。以前、阿里山鉄道は嘉義から海抜2568メートルの塔塔加東埔まで続いており、その海抜落差は2538メートル以上ありました。阿里山鉄道の2421メートルという海抜落差は狭軌鉄道として世界一となっており、特殊性と重要性が見て取れます。

 

基準第4項:阿里山森林鉄道では、登山鉄道の特殊な工法が使われています。非常に複雑なループ線や大規模なスイッチバック、Uターンなどが代表的なものです。また、世界中で多く保存されるシェイ式蒸気機関車も有しており、林業鉄道の過去の発展の重要な道のりを示しています。

 

基準第5項:阿里山森林鉄道の存在は、人類が森林資源を利用してきた歴史を示しています。そして今日までにおける観光鉄道への転換と周辺集落による支援は、森林保護と教育的意味を伝える最適な教材になっています。

 

基準第10項:ヒノキ霧林は世界でも珍しい森林資源です。阿里山鉄道の範囲内には貴重な自然保護区があるほか、亜熱帯広葉樹林や暖温帯広葉樹林、中温帯針広混交林(ヒノキ林)の生態区域が連なり、非常に特殊で多元的な生態環境となっています。

阿里山の景色

 

阿里山は豊富な森林資源を擁している上に、多様な生態環境もその独特さを表しています。「高山青、澗水藍」という曲名の台湾で親しまれている民謡は、阿里山の人文的な特色や壮大な自然を歌っています。阿里山「五奇」と評される「日の出、雲海、夕焼け、神木、鉄道」 は、旅人にとって阿里山を訪れる重要な目的となっています。鉄道からは熱帯、暖温帯、温帯とそれぞれ異なる3つの気候帯における林相の変化を目の当たりにすることができます。日本統治時代の新聞「台湾日日新報」で、全面を使って阿里山が紹介されたこともあります。当時の日本人は阿里山、タロコ(太魯閣)、合歓山を重要な観光地とみなしており、ここから日本人にとっての阿里山の重要な地位が見て取れます。

 

阿里山のマイナス要素

 

阿里山には毎年100万人単位の観光客が訪れます。多くの行楽客と観光バスの来訪により環境の破壊が起こり、それに伴う修復や災害復旧工事が絶えず行われています。さらに2009年には台風8号襲来の影響で台湾南部は甚大な被害を受けました。復旧のために編成された予算は10億5000万台湾元にも上ります。現在でも「阿里山公路」の名で知られる省道台18線は工事による砂煙が舞い、周囲の山谷には重機やショベルカーの音が響いています。「高山青、澗水藍」で歌われた阿里山はいったいどこへ行ってしまったのでしょう。自然と人的破壊は阿里山の資源を消耗させている恐ろしい殺人鬼です。

 

文化保存意識の定着

 

近年、文化資産保存の考え方が世界各国の至るところに根付くようになりました。台湾も国際社会の一員として、世界文化遺産の保存と研究への努力はもちろん余すところがありません。しかしながら、国際的地位の問題に面し、国民からの支持と徹底したローカライゼーションのみこそが台湾の国際競争力にとって重要な支柱となります。したがって、地域に根差した歴史文化や産業の姿、文化資産などの特徴を見せつけることこそが、我が国が国際社会に参加する際の基礎となります。よって、貴重な世界文化資産「阿里山森林鉄道」の保存や研究、活性化への取り組みは、国家の文化政策にとって要務となっています。

 

森林鉄道の工法の特色

 

・ループ線:起点の嘉義から27.36キロメートルの位置にある独立山は勾配が強いため、カタツムリの殻を模し、山を3周することで山頂まで到達する螺旋型の線路が設計されました。

 

・馬蹄カーブと180度のUターン:竹崎駅と樟脳寮駅の間、佳人山に位置する17キロメートル地点は地形の関係上、180度のUターンを描くように線路を敷設することで海抜高度を稼いでいます。これは世界の登山鉄道でよく使われる工法の一つです。

 

・Z型のスイッチバック:線路は「Z」の形のようにジグザグに敷設され、列車は一進一退の方式で進んでいきます。今にも壁にぶつかりそうな光景が現れるため、この地点には「阿里山ホウ壁」との俗称も付けられています。この工法が採用された原因は、地形が狭いため列車がターンできないことにあります。(ホウ=石へんに並)

 

・特殊設計の登山列車:阿里山森林鉄道の傾斜は最大で6.25%あります。このような険しい勾配において補助となる歯車を全く使わず、粘着力のみによって走る登山鉄道は、世界的にも非常にまれです。傾斜の大きい路線を走らせるため、米ライマ社が特別に設計・製造した、傘歯車と直立したシリンダーを持つシェイ式蒸気機関車が採用されました。

 

世界遺産登録物件との比較

 

世界遺産に登録されているインドのダージリン・ヒマラヤ鉄道は、アジアで最小の軌間と最長の路線を有する非電化の登山鉄道です。1881年に開通し、1999年に世界文化遺産に登録されました。路線にはループ線とスイッチバック区間があり、最高地点はグーム(海抜2257メートル)に位置します。路線の途中では、ヒマラヤ山脈の名所の一つで世界3位の標高を誇るカンチェンジュンガを遠くに眺めることができます。高くそびえ立った雄大な景色がすぐ目の前に広がっているような気分にもなります。

 

対する阿里山森林鉄道は、762ミリの狭軌を採用している非電化の登山鉄道です。開通は1912年で、ダージリン・ヒマラヤ鉄道と同様に、ループ線とスイッチバック区間を有しています。最高地点は海抜2451メートルの祝山駅にあり、森林鉄道であり、登山鉄道、高山鉄道でもあります。日の出や雲海、森林、夕焼けなどさまざまな景色も見られます。太陽が玉山から昇ってくる日の出の光景は、見る者を感動させるだけでなく、感情の高ぶりまでをも誘います。それは非常に特殊な人生経験と言えるでしょう。

 

今後の展望

 

一般の人々にとって、阿里山森林鉄道の印象というのは阿里山風景区に入るための交通手段でしかありません。阿里山森林鉄道の沿線地域に存在する豊富な歴史的・文化的資源についても十分な理解や鑑賞がなされていません。 阿里山森林鉄道の歴史や沿線の特色、未来の展望をそれぞれ紹介し、加えて沿線の景観や歴史、文化を探究し、潜在力のある観光地の開発を進めることで、阿里山森林鉄道を「世界レベルの文化資産」にしたいと考えています。同時に、台湾が国際社会で文化外交を展開する上でのウォーミングアップとなることを期待しています。

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